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植物と夢の話 04-01 植物化

その小さな実はあたたかく、極めて薄い山吹色の下からまだらに浮き上がった赤色は、生きている人間からとってきたかのようだった。大きさは人間の眼球くらいで、桃のようなくぼみがある。肉の実――どこからかそんな言葉が浮かび上がってきたような気がした。
草野は思い切ってその実を口に入れた、桃と林檎を混ぜたような味が舌の先に伝わってきた。予想に反しておいしい。腹が減っていたからというだけでは片付けられないなにかが味覚を支配しようとしていた。もっとないのだろうかと思った草野は彼女の方を見た。

「種は割らずに食べてね」
と彼女は待ち構えていたかのように言った。

草野はこれを簡単な契約の形式だと考えていた。種を飲むのもその形式のひとつなのだろうと思ってまだ口の中にあった種を飲み込んだ。

「飲んだ」
「それじゃまたあとで」

彼女はどこかうれしそうだった。
草野は相手が何を笑っているのかわからず頭にきたが、何かをいう前にその場に倒れた。

数時間後、叫び声をあげた草野の目の前には小さな木の枝が生えていた。頭の中で木が軋むような音がして目を覚ました草野だったが、どうやらそれは自分が立てた音だったらしい。

少しあきれた顔をして彼女が戻ってきた。

「こっコレ……」

自分の体に起きた異常に気が動転した草野は口をパクパクさせながら言った。

「木を扱うのは難しいのよ。葉っぱとかもっと小さなものからはじめた方がいいわね」

彼女はそういったが、草野はわけがわからない。

「あなたは今日から植物になったの」

彼女はそう言い放つと自分の名前を名乗った。

「私の名は豊穣亜樹。あなたは?」

「くさの、草野友也……」

テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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