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植物と夢の話 03

~これまでのあらすじ~

見知らぬ草原で目覚めた草野友也はみずからを植物と称する二人組みに出会う。
危険を感じて逃げ出した草野は信じられないほどの走力に目覚め追っ手を振り切った。

隠れる場所を求めて集落の屋敷に忍び込んだ草野だったが、屋敷は何者かの襲撃を受けた。
その際、自分が逃げることも忘れて襲われている女を助けようとするも途中で意識を失う。
気がつくと草野は鎖に繋がれていた。

植物と夢の話 03

2日前
「まったく、あいつは何度脱走すれば気が済むんだ?俺があいつならとっくにあきらめているよ」
背の高い男がいうと、小柄な男が肩をすくめる。
「ほんとに筋金入りだよあいつは」
「しかし親方様もなんでまたあいつばかり生かしておくんだ?俺にはさっぱりわからんよ」
「さあね、単に気に入っておられるのか、あるいはまた何か別のお考えがあるのかもしれないな。どっちにしろあいつが大人しくならねえ限り俺たちに余計な仕事がふりかかるわけだな」

香川は奴隷生活に心底うんざりしていた。それは他の人間達も同じだったのだが、彼の中には他の人間にも増してどうにも押さえ切れないものがあった。もともと人に指図されるのが嫌いな性格であったのかもしれないが、この数ヶ月でそれをはっきりと自覚するようになっていた。

屋敷で働く人間達の目には既に諦観の念が宿っており、安全という不自由を選択したのだからこれでよかったと思い込んでいるようでもあった。そんな所だから香川と共に脱走を試みる者は1人としていなかった。

香川の脱走は既に何度も失敗しており、逃げ出すたびにこっぴどく殴られるのだが、そんなことであきらめる香川ではなかった。その香川の脱走がはじめてうまくいったのが、待ちに待った収穫祭の日だった。酒で浮かれていた植物達は、あわてて香川を探しに出たが遅かった。




「俺をどうするつもりだ」
お礼を言われてすこし照れた草野だったが、すぐにいつもの調子に戻った。

「どうしようかな。でも、それだけ元気があるならもう怪我の方は大丈夫みたいね」
草野は自分の体をあちこち確認したが怪我をした跡はどこにも見つからない。痛みを感じる部位もなかった。草野は怪我をした記憶などなかったので、詐欺かなにかではないかといぶかっていると、それを察したのか彼女は穏やかに言葉を付け加えた。

「さっき私を助けようとして泥棒に体当たりをしたでしょう。そのときに骨が何本か折れちゃったみたいね。あと頭にこぶみたいなのもあったかしら?」
草野は体当たりをした後の記憶がはっきりしないので、骨が折れていたといわれても信じられなかった。けれど襲撃に驚いて床の裏に頭を思いきりぶつけたことはよく覚えていた。あれは痛かったとぶつけたあたりを恐る恐る触ったがたんこぶらしきものがない。驚いて彼女を見上げる。

「どう?すこしは信じた」
そういって彼女は緑の葉のようなもので鎖を切った。

「逃がしてくれるのか?」
「殺されたいのなら逃げるといいわ」
気がつくと草野の首にはさっき鎖を切った葉が突きつけられていた。

「人間のままではこの先どんな選択をしても殺されるわ。でも私たちの同胞になればその未来は変わる。あなたのためなの」
「俺に植物になれって言うのか」
「このままじゃ殺されちゃうのよ」
「……嫌だとはいっていないだろ」
草野はよく分からないけれどこの植物の言うことを聞いておかないと寿命が縮むと確信した。

「物分りがよくて助かるわ」
「じゃあこれ食べて」
そういって彼女はどこからともなく果実のようなものを取り出して草野に渡した。

テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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