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植物と夢の話 02 襲撃

集落の反対側まではかなりの距離がある。とはいえ、走ってもほとんど疲れない草野にとってはゆっくり歩いているのと同じことだった。

振り返ると後ろの二人組みは見えなくなっていたが、まだ逃げなくてはならないような気がして走り続けた。こんなに走ってあとで筋肉痛にならないだろうか?そんなこと考える余裕ができたころには集落の反対側が見えるところまできていた。

草野は辺りを見渡してがっかりした。それは主に集落の反対側に行けば何かあるなどという適当な予想がはずれたからであったけれど、あれだけ走ったのに見える景色がさっきとほとんど変わらなかったというのも大きかった。体は疲れなくても心は疲れるようだ。それなら集落に忍び込もう振り返った草野の目にはさっきまで見えなかった大きな屋敷が映った。この発見は収穫だった。あれだけ大きな家なら隠れる場所もたくさんあるに違いないと思った。しかし、同時に何か嫌な予感もしていた。草野の悪い予感はよく当たる。

ぐずぐずしていると、とつぜん目の前の草地に矢が突き刺ささった。それは前からではなく、後ろから飛んできた。振り返ると武器を持った数人の人影が見えた。隠れていたのだろう。それまで気がつかなかったが、よく見ると森へ向かう草原の草は深いのだった。「またかよ!今日はとことんついてないな!」草野は心の中で叫びながら屋敷に向かって駆け出した。

「おい、今の人間じゃないか?」「ばか言え人間があんなに速く走るかよ」「それもそうだな。それにしても隊長はおそいなあ」「まあ、大丈夫だろ」「それより今のやつほっといたらまずくないか?」「まずいだろうな、でも動くなって言われてるだろ」「……」

屋敷に忍び込んだ草野は、人目につかないように家のまわりを探った。さいわい外には誰もいないようだった。まるで盗人にでもなったようで情けなかったけれど、見つかってつかまるよりましだと思った。草野は辺りに誰もいないことを慎重に確認すると縁の下にもぐりこんだ。ここで静かにしている限り誰かに襲われることはないだろう。安心した草野の意識は遠のいていった。

叫び声とともに目が覚めた草野は、頭をおもいっきり床の裏にぶつけた。「っぁいったぁー」と言葉にならない声を上げたあと、すぐに青くなった。頭突きで大きな音を立ててしまった。上に誰かがいれば間違いなく気づかれたはずだ。

草野は縁の下から出て逃げた方がいいかもしれないと思った。さっき草原で二人組みからうまく逃げたこともあり、おびえたままじっとしているより、逃げるほうがいいと直感していた。急いで外へ出ようと地面を這っていると若い男と女の声が聞こえた。「こいつだ、とにかくこいつを捕まえるんだ!」「なんなの、貴方たちは」

汚い六本の足と、綺麗な服と二本の足が見える。草野は自分が逃げようとしていることを忘れて外に飛び出した。三人のうち二人は大きな棍棒のようなものを持っていた。「やめろっ!」草野は叫びながら縁の下から這い出ると同時に棒を持った男の一人に向かって全力で走り始めた。縁の下から飛び出してきたほこりまみれの少年に4人の視線が集中する。「何だおま……」手ぶらの男が何かを言い終わる前に草野は棒を持った男に体当たりをくらわせていた。

それは無意識のうちに出た行動だったが今の彼にとって適した攻撃手段だった。といってもそれは後先のことを考えない無謀なものでもあったし、相手の体にとってはたいした痛手ではなかったのだが、それは問題ではなかった。草野と男は吹っ飛んだ。「ちっ」手ぶらの男が舌打ちする。棒を持ったもう一人男が女の方に注意を戻すと男の持っていた棒は握っている部分から先が地面に落ちたところだった。

「あはは、かわいこぶってみたよ」女はいたずらがうまくいった子供のように笑っている。「何事だ!」ドタドタと人が集まる音が聞こえる。「くそっ!」草野に吹っ飛ばされた男はあわてて立ち上がった。そこで草野の記憶は途絶えた。

気がつくと草野は暗い部屋の中にいて、手は軽い鎖のようなものでつながれていた。さっきまでのは夢だったのだろうか?それとも今が夢なのだろうか。草野がもうろうとした頭でそんなことを考えていると。明かりとともに女が音もなく現れて言った「さっきはありがとう」

テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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